【許認可コラム】名前貸しは絶対NG!建設業の要「専任技術者(専技)」ってそもそも何者?
こんにちは。八王子の行政書士、吉村です。
今回は、建設業許可を取る上で絶対に避けては通れない最重要キーパーソン、「営業所技術者等」、通称「専技(せんぎ)」についてお話しします。
「うちの親父、昔大工やってたから名前だけ借りれば許可取れるっしょ!」
……社長、その考え、一発レッドカードで退場です! 素人の方には少しとっつきにくい「専技」のルールと、他社の役員に入っている場合の意外な例外、そして社長一人の会社が陥りがちな現場兼任の落とし穴について、限界までかみ砕いて解説します。
1.専技(せんぎ)ってそもそも何者?
建設工事の請負契約をきちんと結んで、正しく工事を完了させるためには、「建設工事についての専門知識」が必要です。そこで建設業法では、「営業所ごとに、許可を受けようとする建設業に関して、一定の資格又は経験を有する技術者を置きなさい」と決めています。
この「技術の番人」こそが営業所技術者等(専技)です。この人が会社にいないと、そもそも建設業許可は取れませんし、途中で辞めて代わりがいなければ、許可は取り消されてしまいます。
2.「常勤性」の壁と、他社役員兼任の「意外な例外」
専技になるための最大の壁が、「専任」の者でなければならない、というルールです。「専任」とは、その営業所に常勤して、専らその職務に従事することをいいます。つまり、以下のようなケースは原則として全てNGです。
- 他に個人営業を行っている者。
- 住所が営業所から著しく遠距離で、常識上通勤不可能な者。
- 他社の常勤役員や「代表取締役」となっている者。
ここでよくご相談いただくのが、「昔の付き合いで、知り合いの会社の代表取締役に名前だけ入っているんだよね」というケースです。代表取締役は法律上「その会社に常勤している」とみなされるのが大原則なので、通常は一発アウトになります。
しかし、ここに現行法の「例外(抜け道)」が存在します!
もしその別会社が完全に「休眠状態」であることを証明できる場合や、代表取締役が2名以上いる会社(複数代表)であって、「自分はあくまで非常勤の代表取締役である」という証明書と登記を出せる場合は、例外的に専技として認められる道が残されているのです。「他社の役員に入ってるから絶対ムリだ…」と諦める前に、登記簿と実態を照らし合わせる価値は十分にあります(これはかなりレアなケースですが…)。
3.社長一人の会社の場合、専技は現場に出られるの?
次によくあるご質問です。「うちは社長の私一人の会社で、私が専技になります。それなら、私は現場の『主任技術者』として工事現場に出られないの?」
結論から言うと、「近場の小さな現場ならOK、遠くの大きな現場はアウト」です。
建設業者は、工事現場に必ず主任技術者を配置しなければなりません。専技は「営業所に常勤」が絶対ルールですが、営業所の近隣で、かつ営業所での職務に支障がない小規模な現場であれば、特例として現場の主任技術者を兼任できます。
しかし、請負金額が税込4,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となるような大きな現場で「現場への専任配置」が法律で義務付けられる工事の場合、人間は影分身できませんから、営業所の専技と現場の主任技術者を兼任することはできず、完全に法律違反となってしまいます。
4.「一人親方で特定建設業」は取れても意味がない!?
さらに恐ろしいのが、「特定建設業」の許可を取る場合です。特定建設業は、発注者から直接請け負った工事を、合計5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上下請けに出すための許可です。
この規模の工事を行う場合、現場には主任技術者ではなく、さらに上位の「監理技術者」を配置しなければなりません。そして、これほどの大型工事になると、監理技術者はほぼ例外なく「現場に専任(張り付き)」になります。
もし御社が社長一人の会社で特定建設業の許可を取ったとしましょう。いざ5,000万円以上の下請けを使う大型工事を受注した時、社長が現場の監理技術者として出向けば、営業所がカラになり専技不在でアウト。逆に営業所を守れば、現場に監理技術者がおらずアウト。
つまり、有資格者が社内に一人しかいない状態では、特定建設業許可は「取れても実質使えない宝の持ち腐れ」になってしまうのです。
5.「なるほど!」ポイント:安心できる人員体制とは?
会社を安全に大きくしていくための「安心できる人的環境」、それは「守りの専技」と「攻めの現場監督」の2枚看板(ツー・トップ体制)を作ることです。
社長が営業所の専技としてどっしり構え、現場を任せられる有資格者をもう一人育てるのが王道です。実は朗報があり、令和5年7月から技術者の要件が緩和されました。技術検定(1級1次・2級1次)の合格者は、指定学科卒業者と同等とみなされ、合格後3年〜5年という短い実務経験で専技や主任技術者になれるルートが新設されたのです。
専技の要件は、持っている資格や学歴、経験年数、そして他社での役員状況などによってパズルのように複雑です。「うちの社員、最短でいつ専技になれる?」「他社の役員に入ってるけど突破できる?」など、会社の成長を見据えた人員計画に迷ったら、ぜひ行政書士吉村法務事務所へご相談ください。御社に合わせた最適な「資格戦略」を一緒に考えさせていただきます!